第221回:3Dプリンタの利用と知財の関係とは?Part4

 

こんにちは~、ネオフライトの宮川壮輔です。

さて、今回も、3D時代の知財のお話し(^0^)

前回、個人ユーザーの業務使用の場合について、

ザッと整理してみましたね。

でも、一つだけ残していました。

これです。

 

(ii)流通データを利用する場合について

これは、3Dデータを販売する場合と、

購入する場合に分けましょう、

という話しをしました。

そもそも、3Dデータってどんなものなんでしょうね。

例えば、フィギュアなどがあったとしましょう。

フィギュア自体は、著作物として、著作権の保護対象となりますね。

また、例えば、コップなどがあったとしましょう。

コップ自体は、特許の保護対象となり得ます。

なので、著作権や特許の保護対象となっているモノをマネして

同じモノを販売することは、権利侵害となりますね。

まあ、これ自体は、なんとなく理解しやすい。

ところが、3Dデータの場合、

それ自体は、線図などのサイズや位置関係などが詰まった

情報の集合体にすぎませんよね。

つまり、フィギュアという物理的なモノに対して、

モノで再現する一歩前の情報なんです。

なので、3Dデータ自体を販売することは、

そのフィギュアの著作権に対して、

直接的には、侵害とはなりません。

ただし、知財権の世界には、

間接侵害というものがあります。

間接侵害というのは、

直接侵害とはならないまでも、

直接侵害となり得る一歩前の部品などの販売が対象となります。

3Dデータを扱う場合、

間接侵害となるかどうかが結構重要になってくるでしょう。

 

まずは、著作権系。

実は、著作権の場合、一部のみの実施を規定するような

間接侵害規定はありません。

ただし、判例上は認められることもあるようです。

著作権の場合、3Dデータ自体を販売することは、

直接侵害にはならないかもしれませんが、

間接侵害にはなり得るでしょう。

なので、例えば、違法3Dデータを販売するサイトなどは、

認められなくなるでしょう。

ただし、著作権の間接侵害は、裁判所判断になってしまうので、

予測可能性が低く、やや問題ありですな。

おそらく、3Dデータの流通による影響が無視できなくなったら、

ここら辺の何らかの改正が行われるんじゃないかな。

3Dデータ自体の販売が侵害となるような

規定が盛り込まれると思います。

また、3Dデータを購入すること自体は、

今のところ侵害にはならないと思いますが、

これも、3Dデータの流通による影響が無視できなくなったら、

何らかの法改正が行われるかもしれません。

 

一方、特許系の場合。

特許系の場合、間接侵害というのは、

条文上明確に規定されています。

その点では、著作権よりは、明確。

ただし、本当に間接侵害になるかは微妙な感じ。

3Dデータ自体が、「コップ」の生産にのみ用いる物であるかどうか。

3Dデータ自体は、ソフトに読み込まれた時点では、

「コップ」にはなりません。

ソフトに読み込まれて、そのコンピュータが、

3Dプリンタを動かして初めて「コップ」が造形されます。

広い意味では、「コップ」の生産にのみ用いる物なんだけど、

狭い意味では、外れる可能性もあるかもしれない。

要するに、3Dデータを販売する行為は、

おそらく間接侵害になり得るものと思われますが、

実際には、いろんな解釈の余地を残していそう。

なので、この辺も、3Dデータを販売する行為が

明確に間接侵害になる、とする何らかの明確な指針が欲しいですね。

これも、3Dデータの流通による影響が無視できなくなったら、

何らかの改正が行われるかもしれない。

ちなみに、コンピュータ関連の特許の場合、

その装置だけでなく、方法やプログラムなど、

実体は同じでも、いろんな側面から表現して、

保護の強化を図ろうとすることが

一般的に行われています。

これは、侵害者の実施の態様に応じて、

なるべく容易に権利行使できるようにするためです。

でも、通常の「物」の発明の場合、

「物」としてしか表現しないことが一般的です。

なぜなら、今までは、「物」に対しては、

「物」としてパクることしかなかったからです。

これからは、「物」の発明であっても、

侵害者の実施態様のバリエーションを考えると、

いろんな側面から表現することが

必要になってくるかもしれません。

例えば、「物」の発明に加えて、

その「物の製造方法」や「物を製造するプログラム」、

「物を製造する装置」などなど。

「物を製造するプログラム」や「物を製造する装置」なら、

少なくとも、その「物」よりも、

間接侵害の適用が容易になるような気がします。

ただちょっと、特許書類がいたずらに長く複雑に

なってしまうような気がするので、

間接侵害の解釈を明確にしてもらった方が良いかな。

なお、特許系の場合、3Dデータを購入するだけだったら、

通常は侵害にはなりません。

でも、その3Dデータが特許侵害になることを知っていた場合、

間接侵害になるかもしれません。

 

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●●今回のネオフライト奥義●●

・3Dデータの流通に対して効いてくるのは間接侵害だ!

・間接侵害の解釈はやや微妙!

・これから、おそらく間接侵害の明確化が図られるんじゃないか!

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ということで、業務使用を、まとめるとこんな感じ。

「2.業務使用の場合」

(1)自主制作について

→特許系 ○(侵害)

著作権系 ×(非侵害)

(2)他者利用
(i)他人のモノをマネする場合について

→○(侵害)

(ii)流通データを利用する場合について

→△(おそらく侵害だが不明確)

(iii)3Dスキャンなどによる取り込みについて

→○(侵害)

こんな感じになりました。

 

それでは、また次回。

 

ネオフライト国際商標特許事務所
弁理士 宮川 壮輔

 

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