こんにちは~、ネオフライトの宮川壮輔 です。
さて、今回は、特許の争いのお話し。
特許判例の中から、事例的なものを紹介しましょう。
まずは、特許権者は、A社。
金型屋さんです。
資本金300万円ですから、いわゆる零細小規模企業
と言っていいでしょう。
一方、訴えられた側は、B社。
金型だけでなく、いろんな加工を行ったり、
各種基板を製造しています。
資本金は2億円で、国内だけでなく海外にも
拠点を持っています。
資本金だけがすべてではないでしょうが、
A社は、自社より70倍大きなB社を訴えた
わけですな(゜Д゜)
結果はどうなったかというと・・・
はいっ・・・
出~た~・・
まさ~に~・
A社の負けでした(ToT)ザンネン
では、A社はなぜ負けたのか、分析してみましょう。
特許というのは、言葉の世界です。
なので、主として言葉の解釈の争いになります_φ(・_・
特許自体は、「金型」です。
●まず、争点の一つ目
「独立状態の凹部」という表現
●争点の二つ目
「表面に酸液を散布し」という表現
特許明細書の作成が難しいのは、
・疑義の生じない明確な表現
・権利が狭くならないような上位概念的表現
が、これまた一筋縄ではいかないからです。
これらの感覚は、訴訟を経験して痛い目に合わないと
なかなか研ぎ澄まされていきませんな(´д`)
今回、「独立状態の凹部」という表現は、
疑義の生じる余地のある表現ですな。
「独立状態」の部分です。
こういう場合、明確な定義を設けておくことが鉄則です。
つまり、「独立状態の凹部とは、~という。」といった
記載を入れておく必要があります。
そうでないと、疑義が生じた場合、特許権者に不利に
扱われることが多いからです。
また、「表面に酸液を散布し」という表現に対して、
B社は、「表面に酸液を浸漬し」ていたらしい。
つまり、特許は「散布」、B社製品は「浸漬」と
なっていたわけですな。
「散布」といったら、ふりかけるといったイメージ
でしょうか。
「浸漬」と言えば、ひたすといったイメージです。
たったこれだけのことで、侵害の白黒に影響してくる
訳だから、 特許書類というのは、おそろしい
ですな(((;゚Д゚))))))
結局、裁判所は、
「A社は、
B製品に「独立状態の凹部」があること、
および
B製品が「散布」されていること
を立証していない」
として、A社の訴えをはねのけました。
今回は、A社側の立証の仕方が、かなり良くなかった
ような印象ですね。
判決文に、
「A社は、B社からたびたび指摘を受けてもなお、
~主張も行うことなく、~具体的に主張していない
ものである。」
などと記載されています。
なかなか手厳しいコメントですね、これは(>_<)
この事例から学べることはどんなことなんでしょうね。
こんな感じでしょうか。
●文章表現を明確にする。あいまいな部分は定義する。
→「独立状態の凹部」って良く分からんということ。
●発明の本質をつかまえて、広く表現する。
→「表面に酸液を散布し」という記載を、
「表面に酸液層を設け」などとしておけば、
おそらく、「散布」も「浸漬」も「塗布」なども
権利範囲に含まれるでしょう。
●特許訴訟に慣れた弁理士、弁護士に依頼する。
→弁理士、弁護士の少なくとも一人に、
特許訴訟経験が無いと、結構シンドイのではなかろうか。
●いろんな角度から権利を取る
→ちなみに、この権利は「金型」だけですが、
「金型の製造方法」や「成形品」や「成形品の製造方法」
なども、請求項に記載しておけば、より多面的に
保護できますね。
まあ、事が起こってからの分析というのは、
事が起こる前の備えより、はるかに簡単なわけで、
なんか知った顔して上から物申してるみたいですが、
その点は、何卒ご勘弁を(^O^)
それでは、また次回。
ネオフライト国際商標特許事務所
弁理士 宮川壮輔
業界初の”エンタメ系”実践特許術!
「特許専門の弁理士が、あなただけにコッソリ教える実践特許6つの秘訣!」PDF A4:53ページ