代表弁理士 宮川 壮輔
ここ何回か、AIと著作権について
お話ししてきました。
いきなり細かな論点にフォーカスするより、
まずは全体把握をした方が
状況は明確になると思います。
今回は、今までのお話しをまとめて
このテーマの最終回としましょう。
まずは、AI関連のプロセスを
以下の2つに分けましたね。
(1)生成
(2)利用
これら各2つのプロセスにおいて、
論点がありましたね。
具体的には、(1)生成の段階で1つ、
(2)利用の段階で3つの論点がありました。
まとめて表示すると、こんな感じです。
(1)生成
●論点1:事業者は学習用プログラムへの
入力段階で他者データの著作権を
侵害するか?
(2)利用
●論点2:ユーザーは生成系AIへの
入力段階で他者データの著作権を
侵害するか?
●論点3:生成系AIによって生成された
AI生成物は、他者の既存の著作権を
侵害するか?
●論点4:AI生成物は著作権によって
保護されるか?
通し番号で言うと、
AIと著作権の主要な論点としては、
全部で4つありますね。
論点1は、生成時における
事業者の入力時の問題です。
著作権法30条の4という
例外規定の適用があるかどうか、
ということが問題となりましたね。
おそらく、多くの場合、
この例外規定が適用されて、
著作権侵害にならない、
と判断されると思います。
日本は、「機械学習パラダイス」
ですからね。
諸外国と比べても、
この段階での規制は緩いです。
論点2は、利用時における
ユーザーの入力時の問題です。
これも、論点1と同様に、
30条の4の例外規定の適用が
問題となりますね。
ただし、この場合は、
一般的な正解はなく、
個別具体的な判断になると思います。
論点3は、AI生成物が
他者の著作権の侵害となるか、
という問題ですね。
この場合、AI生成物が、
他者の著作物に依拠して
生成されたかどうかという点が
問題となりました。
AI特有の悩ましい問題です。
生成系AIというプログラムは、
他者の著作権を学習して
作られていることからすると、
依拠すると言っても良さそうだし。
でも、生成系AIがどんな情報を
学習したかについて、ユーザーは
知らないんだから、依拠性を認めるのは
行き過ぎ?という見解もありますね。
ですので、この論点についても、
一般的な正解はなく、
個別具体的な判断になりますね。
論点4は、AI生成物が著作権の
保護対象になるかという問題ですね。
これについて、
知的財産戦略本部が
次のように解釈しています。
「
ユーザーに「創作意図」があって、
このユーサーに「創作的寄与」があれば、
AI生成物でも著作物となる
」
つまり、ユーザーが簡単に指示しただけで、
ほとんどは生成系AIが生成した
ような場合は、
著作物とは言えない可能性が高い。
一方、ユーザーが何度もトライ&エラーを
繰り返して生成したような場合には、
著作物として認められることも
あり得るでしょう。
この論点も、一律に割り切ることはできず、
個別具体的な判断となりますね。
AIと著作権の論点についてまとめると、
全体としては、ザッと上記1~4の
4つの論点となります。
メディア等で報道されている
AIと著作権絡みの問題は、
だいたいこれら4つの論点を
背景にしていることが多いと思います。
今まで、論点の全体把握をしてきました。
ここから先は、それぞれの
興味や状況に応じて、
各論点について深掘りしていくと
良いでしょう。
続きは、また次回。
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●●今回のネオフライト奥義●●
・AIと著作権は、全体把握が重要!
・現在、4つの主要論点がある!
・全体を認識してから個々の論点へ!
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