代表弁理士 宮川 壮輔
先日、パワーポイントの資料に関して、
著作権侵害として争う事案の
判決が出されましたd(^_^o)
(令和4年(ネ)10088号)
事案を簡易的に示すとこんな感じ。
・原告会社Aに務める社員Bがパワポの資料を作成
・社員Bが被告会社Cに移籍
・社員Bが以前のパワポ資料に基づいて新たにパワポ資料を作成
・社員Bが被告会社Cに新たなパワポ資料を送信
→そこで、原告会社Aが被告会社Cを
著作権侵害で提訴(`ε´)
あなたならどう思いますか?
著作権侵害は認められますでしょうか?
まあ、これだけでは分かりませんよね。
実際の旧パワポ資料と、新パワポ資料を
見ないと、具体的なことは分かりませんし。
資料は図表で説明されているそうです。
これらの資料は見ることはできませんが、
ざっとこんな様子だそうです(^_^)b
・著作権表示などが消されている
・会社のマークが書き換えられている
・罫線や文字フォントが若干変えられている
・図が若干変えられている
これならどうですか?
著作権侵害は認められますかね?
確かに、旧パワポ資料に付されていた
著作権表示が消されている、という点は、
気になりますね(@_@)
ここは、仮説でもいいので、YesかNoか
決めてみてください。
では、結論と法的根拠を見ていきましょう。
結論は、、、
はい、、、
こうでした。
●No(著作権非侵害)
これだけだと、答えしか分かりませんので、
再現性がありませんね(^_^)b
法的根拠を含めて考える必要があります。
まず、著作権侵害と言えるには、
対象となる著作権を明確にしましょう。
著作権というのは、
いろんな権利の集合体ですからね(^.^)
今回、対象となる著作権は、
複製権と翻案権の2つです(^_^)v
つまり、原告会社Aは、複製権侵害と
翻案権侵害を主張したわけですね。
ただし、著作権の場合、
重要なのは、そもそも権利が
発生しているか、という点です(・o・)
特許や商標の場合、
特許庁に登録されていれば、
権利の存在は明らかですので、
この点で争われることはほとんどありません。
しかし、著作権の場合、
登録は不要ですので、
そもそも著作権が
発生している事案なのか、
ということが重要になってきます(^_^)b
著作権の保護対象は、
著作物です(^o^)
著作物は、このように定義されています。
●著作権法2条1項1号
「
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、
文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
」
つまり、社員Bが作成したパワポ資料が、
「思想又は感情を創作的に表現したもの」
かどうかが重要なんですね(^○^)
実際に、そこが争点になっています。
裁判所は、このように判断しました。
「
本件データの表としての体系、配列は、
情報を分かりやすく整理して
これを伝えるために、
一般的によく使用されるものであるにすぎず、
そこに一定の工夫がされていたとしても、
表現それ自体ではないアイデア又はありふれた表現にすぎない
というべきであり、創作性を認めることはできない。
」
つまり、今回のパワポ資料の図表は、
著作物と言えるほどの創作性がない、
と判断したわけです(`ε´)
ということは、著作物とは言えないなら、
著作権の保護対象じゃないわけだし、
そもそも複製権侵害や翻案権侵害の
是非について争う必要もないわけですね。
ということで、著作権侵害はなし、
として、控訴審判決が出されました。
重要なのは、
パワポの資料は著作物ではない、
と盲目的に覚えるのではなく、
今回のパワポ資料は、
一般的な表現にすぎないため、
定義と照らし合わせると
著作物ではなかった、
と順を追って理解することですね。
続きは、また次回。
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●●今回のネオフライト奥義●●
・著作権は権利の有無が問題!
・著作権の保護対象は著作物!
・著作物に該当するか否かを検討せよ!
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