今日も、いきなりステーキのお話し。
前回の続きで、
(3)特許が認められる要件について。
前回、こんな話しをしましたね。
特許が認められるには、
発明として認められる必要があり、
発明として認められるには、
技術感・テクノロジー感が必要。
ということで、”いきなり特許”の
最初の姿はこんな感じ(^_^)b
分かり易いように少し変えてます。
「
・お客様を立食形式のテーブルに案内し、
・お客様からステーキの量を伺い、
・伺ったステーキの量を肉のブロックからカットし、
・カットした肉を焼き、
・焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶこと
を含むことを特徴とする、
・ステーキの提供方法。
」
これを見ると、どうですか?
これは人間の行為が大半ですよね。
なので、技術感・テクノロジー感が
やや弱いです(>_<)
で、特許庁は、最初、
こんな感じで拒絶しました。
「
この”ステーキの提供方法”は
ステーキを提供する手順という
人為的取り決めを示すものであり、
自然法則を利用しているものではない。
したがって、発明に該当しない。
」
この特許庁の見解を改めて見ると、
言ってることが何となく分かりませんか?
上の”自然法則”というのが、
”技術感・テクノロジー感”という意味です。
個人的にも、妥当な見解だと思います。
そこで、いきなりステーキ側は、
この請求項を以下のように
後半群を追加する補正をしました。
(前半群)
「
・お客様を立食形式のテーブルに案内し、
・お客様からステーキの量を伺い、
・伺ったステーキの量を肉のブロックからカットし、
・カットした肉を焼き、
・焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステーキの提供システムであって、
」
+
(後半群)
「
・お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、
・お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、
・お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備える
ことを特徴とする。
」
これによって、特許が認められました(°°)
つまり、発明として認められました。
つまり、”技術感・テクノロジー感”を
利用している、と認められたんですね。
なので、この請求項を
発明たらしめているのは、
(後半群)の要素となります。
ブツだけを抜き出すとこんな感じ。
・札
・計量器
・印
これら3つのブツを
”ステーキの提供システム”が
備える、としたことによって、
発明として認められたんですね。
知財実務を長くやっていると、
こういうチャレンジングな請求項は
なかなか書けません(^_^;
個人的にはとても違和感があるし、
これで特許が取れるとは、
思わなかったでしょうね。
プロとしては素直に反省すべき(>o<)
ここで、思い出して頂きたいのは、
特許が認められてから復活までの経緯。
特許庁は上の請求項で、一旦特許を認めました。
ただし、その後に第3者から異議申立があって
この特許を取り消しましたね。
理由は、
”これは発明じゃない”
というものです。
さらに、特許庁の取り消しの決定に対して、
いきなりステーキ側が裁判所に提訴。
請求項に多少の手直しがあったものの、
裁判所は、特許庁の取り消しを取り消して、
特許が復活しました。
理由は、
”これは発明である”
というものです。
これらの経緯や事実からしても、
この特許が発明の成立性のギリギリを
イってるのが分かると思います。
この特許の発明成立性については
まだまだ議論の余地はあると思いますが、
その辺はアカデミックの世界に譲るとして、
実務家としては、
この特許が認められるとなると、
これからの飲食業の特許が、
面白くなるかもしれない、
と思っています(^▽^)
続きは、また今度。
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●●今回のネオフライト奥義●●
・ブツを組み込めば発明となり得るかも?
・これからの飲食業の特許がオモロイ?
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ネオフライト国際商標特許事務所
弁理士 宮川 壮輔
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